|
|
| 長門: |
EPOがロンドンに行く直前だったと思うんだけど、僕が制作をやっていた薬師丸ひろ子ちゃんのアルバム(『シンシアリー・ユアーズ』)に楽曲提供してもらったこともあったね。あの時のEPOが歌ったデモ・カセット、まだ持ってるよ(笑)。 |
| EPO: |
デモ・テープ?!うわ〜(笑)。 |
| 長門: |
で、その曲が「ル・パ・ラ」って曲で。あの世界は普通のアレンジャーじゃなくて、EPOの意図を理解してくれるひとっていうことで、窪田晴男くんにアレンジを頼んだんだよね。 |
| EPO: |
そうそう。すごくいいアレンジでした。 |
| 長門: |
ああいう感じのブラジリアンぽい曲をひろ子ちゃんが歌うのは、もちろん初めてだったから、仕上がりもとても新鮮なものになった。ひろ子ちゃんの新しい一面を引き出すこともできたんじゃないかな。EPOからデモをもらって初めて聴いた時、それまでの作風とは、違うなあって思った記憶がある。 |
| EPO: |
あの頃は、“ポップで元気なEPO”から、今に繋がる過渡期だったのかもしれませんね。 |
| 長門: |
最初にワールド・ミュージックに興味を持ったきっかけってどういうものだったのかな? |
| EPO: |
自分の血の中から出てくるものに回帰したくなったっていうのが理由のひとつとしてありますね。風が吹いても、雨が降っても、揺れないもの。自分のアイデンティティに立ち返った音楽を1回やっておく必要があると思ったんです。たとえば、カーペンターズだったり山下達郎さんだったり、影響を受けてきたミュージシャンはたくさんいたんですけど、“じゃあ自分そのものの音楽って一体何だろう?”って思ったときに、どうしても影響されてきた人たちのエッセンスより下に行けなかったんですね。そこから下の、地面から生えている、自分のアイデンティティを音楽で表現したいなと思って。その根っこさえあれば、枝を伸ばそうが、折り曲げようが大丈夫な気がして。直接的なきっかけはイギリスに行ったことです。一緒にレコーディングをしたスティーブというミュージシャンから“君は何をしたいの?”って言われた時に、今まで面と向かって、そんなこと言われたことがなかったから、私、固まってしまって(笑)。日本にいる頃は、“フォーシーズンズの、こういう曲に似た感じのものをやりましょう”とか、そういう感じで音楽を作っていたから。8年近く音楽をやってきたのに、一番大事なところをやってきてないんだなと思って。その時に、“自分のコアなエッセンスってなんだろう?”って真剣に自分を見つめなおしたんです。初めて“あなたと違うわたし”っていうものを意識したのはイギリスだったんです。 |
| 長門: |
そうやって出来上がったのが『FIRE&SNOW』というアルバムだったんだね。あのアルバムに入っていた「赤い川」、好きだったな。 |
| EPO: |
本当に愛でていただいているんですね。ありがとうございます。 |
| 長門: |
アルバムの中で、「赤い川」だけちょっと異色だと思うんだけど、それはやっぱり、日本人としてのアイデンティティを意識して? |
| EPO: |
そうですね。 |
| 長門: |
その後、『Wica』をリリースして。そこから今まで、ずっといい流れが続いているような感じがするね。 |
| EPO: |
そうですね。あとは “eponica Record”っていう自分のレコード会社を立ち上げたのも大きかったですね。レコード会社の事情に合わせて作るんじゃなくて、たとえば農作物がちゃんと育って、いいものが出来たときに出荷されるように、自分の作品もそういうタイミングで出荷できないかなって。それまでは最初に出荷日が決まっていて、そこに向けて逆算して作品を作っていたから、追われている時間も長かったし、なかなか自分の時間調整ができなかったんです。出荷日を決めないで、いいものをちゃんとみんなに提供できる状況って、どんなものなのだろうと思ったら、eponica Recordっていうのを作って、まずは自分がやりたい音楽をちゃんと作ることだなと思って。それで10年前にマイ・ギターを買って曲を作り始めたんです。それと同時に、当時、私はメンタルにいろんな問題を抱えていたので、催眠療法──いわゆるカウンセリングっていうものを受けるきっかけに出会ったんですね。それを体験したときに、“ありのままってどういうことなんだろう?”って思ったんですよ。私はありのままでいられない時間が、すごく子供の頃から長くて、自分の中に絶えず混乱を持っていたんですね。それで、心理学に興味を持つようになって、4年間学校に通いながら、曲を作っていたんです。 |
| 長門: |
今もマイアミの学校に通っているんですよね。 |
| EPO: |
はい。今はさらに、その次の段階を勉強していて。秋から4年生になります。4年生を卒業すると今度は人を教える、カウンセリングのコースに入っていくんです。 |
| 長門: |
生涯勉強だね。 |
| EPO: |
音楽もそうですよね。何もないところから、ものを作り出していく作業ですから。たぶん、音楽の仕事をしなくなるまで、ずっと続いていくんじゃないかなと思っています。 |
|
|